陸王最終回ネタバレ&原作結末!零細企業の想いを込めた靴が有名に?試行錯誤を続けながらランニングシューズの開発に挑戦する物語!【陸王】最終回ネタバレ&原作結末!零細企業の想いを込めた靴が有名に?池井戸潤原作!感動と勇気を与えてくれる話題作!早速見てみましょう!
Contents
TBSドラマ日曜劇場 原作【陸王】の基本情報!
放送時間:毎週日曜21時00分~
放送開始日:10月15日
放送局:TBS系
原作:池井戸潤「陸王」(集英社 刊)
脚本:八津弘幸
プロデューサー:伊與田英徳(「半沢直樹」「下町ロケット」) 飯田和孝
演出:福澤克雄、ほか。

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池井戸潤作品『陸王』「小説すばる」(集栄社)2013年7月号から2015年4月号まで連載され
2016年7月8日に集英社から単行本が刊行されました。
数多くの小説がドラマ化されていますよね!
TBSドラマ日曜劇場 原作【陸王】のあらすじ!

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埼玉県行田市にある足袋製造会社「こはぜ屋」は創業から100年の歴史をもつ老舗。
近年は業績が低迷し資金繰りに悩んでいたそんなある日、
四代目社長の宮沢紘一はこれまでの足袋製造の技術力を生かし
「裸足感覚」を取り入れたランニングシューズの開発を思いつき、社内にプロジェクトチームを立ち上げます。
会社の存続をかけて異業種に参入した「こはぜ屋」でありましたが、資金難、人材不足、大手スポーツメーカーの嫌
がらせや思わぬトラブルなど様々な試練に直面します。宮沢たちは坂本や飯山の協力や有村や村野の助言を受けて
試行錯誤を続けながらランニングシューズの開発に邁進するという物語です。
TBSドラマ日曜劇場 【陸王】キャスト!
役所広司(役:宮沢紘一)

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埼玉県行田市、創業100年の足袋を製造する老舗会社「こはぜ屋」の社長。業績の低迷に悩んでいたが、ある日「裸足」の感覚で走れる「ランニングシューズ」の開発を思いつき、プロジェクト・チームを立ち上げる。
山﨑賢人(役:宮沢大地)

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紘一の息子。就職活動中
竹内涼真(役:茂木裕人)

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「ダイワ食品」新人陸上部員。箱根駅伝で注目され入社した期待の新人だったが、膝を痛めてしまう。フォームの改良に挑むなか「こはぜ屋」のランニングシューズ「陸王」と出会う。
寺尾 聰(役:飯山晴之)

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「飯山産業」元社長。飯山産業は「陸王」に欠かせない素材「シルクレイ」を作っており、「陸王」の開発に協力する。
風間俊介(役:坂本太郎)

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埼玉中央銀行の行員。融資担当で、「こはぜ屋」に新規事業の提案をする。
光石 研(役:有村融)

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スポーツ用品店オーナー。
市川右團次(役:村野尊彦)

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カリスマシューフィッターと呼ばれるシューズ調整のプロ。「アトランティス」の営業部に所属して選手のサポートに務める。高い技術力に加え、選手からの信頼も厚い人物。
その他のキャスト!
キムラ緑子(役:飯山素子) 飯山の妻。飯山を献身的に支える。
音尾琢真(役:城戸明宏) 「ダイワ食品」陸上競技部の監督。
志賀廣太郎(役:富島玄三) 「こはぜ屋」の経理担当常務。
馬場徹(役:大橋浩) 埼玉中央銀行の融資課長。はじめは「こはぜ屋」の新規事業に懐疑的で宮沢や坂本と対立するが、徐々に「こはぜ屋」の「陸王」開発へのひたむきな姿勢に共感するように。
桂雀々(役:家長亨) 埼玉中央銀行行田支店長。銀行の支店長であることを鼻にかけ、零細企業を小バカにしている。「こはぜ屋」の新規事業に情熱を傾ける坂本とはそりが合わず、卑怯な手を使うことも…。
阿川佐和子(役:正岡あけみ) 「こはぜ屋」の縫製課リーダー。平均年齢60歳のこはぜ屋の縫製課を束ねる元気なおばちゃん。ムードメーカーで、長年培ってきた縫製技術はピカイチ。新規事業「陸王」のメンバーとして参加する。
檀ふみ(役:宮沢美枝子)宮沢の妻。夫の仕事を支え、息子の大地の就職活動を応援する良き妻であり9良き母。
ピエール瀧(役:小原賢治) 「こはぜ屋」のライバルである大手スポーツメーカー「アトランティス」の営業部長。一流大学を卒業後、アメリカの有名大学で経営修士号を取得という輝かしい経歴を持つ「アトランティス日本支社」の営業部長。利益至上主義で、まるで悪代官のような性悪。
小籔千豊(役:佐山淳司) 「アトランティス」に務める小原の部下。小原にゴマすりをしながら生き延びている。
内村遙(役:安田利光) 「こはぜ屋」の係長。面倒見がいい若手社員のまとめ役。
正司照枝(役:西井冨久子) 「こはぜ屋」縫製課の最年長かつベテラン縫製員。足袋のデザインも担当。
上村依子(役:橋井美子) 「こはぜ屋」縫製課のスタッフ。
春やすこ(役:水原米子) 「こはぜ屋」縫製課のナンバー2。縫製技術に長けており、「陸王」プロジェクトに参加する。
吉谷彩子(役:仲下美咲) 「こはぜ屋」縫製課の最年少スタッフ。高校卒業後「こはぜ屋」に就職。ミシンの使い方も社会人としてのマナーもすべて「こはぜ屋」から学ぶ。真面目で気遣いのできる性格。
佐野岳(役:毛塚直之) 茂木のライバルである「アジア工業」陸上競技部の部員。
和田正人(役:平瀬孝夫) 「ダイワ食品」陸上競技部の部員。
上白石萌音(役:宮沢茜) 紘一の娘で大地の妹。
TBSドラマ日曜劇場 原作【陸王】の最終回ネタバレ&原作結末!

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「こはぜ屋」があるのは、埼玉県行田市の中心地からやや南下した水城公園とさきたま古墳公園に挟まれた場所。
従業員数は、正社員とパートを合わせても27名の小所帯。1913年の創業以来100年以上の歴史を誇る足袋製造を生業としてきた老舗が「こはぜ屋」なのです。
行田というはそもそも足袋の町で、その生産量はかつて日本全体の8割を占めていたほどでしたが、今ではもう「こはぜ屋」を含めた数軒しか生き残っていません。
従業員の平均年齢は57歳、しかも最高齢は75歳と極めて高く、ミシンの古さ同様、現在のこの業界の状況が如実に表れていました。
社長室へ戻った宮沢のもとに資金繰り表を手に再びやって来た富島。今月末か来月に2千万は借りないと厳しいのだそう。
翌日、宮沢は取引先の埼玉中央銀行の担当者である坂本太郎もとへと向かいました。
「来月までに2千万、ですか」と、提出した書類をじっと見つめる坂本。
しばらく書類に目を通した後、2週間ほど時間が欲しいという坂本の言葉を受け、その場で突き返されることを危惧していた宮沢は、一瞬安堵したのですが…。
「でも社長、これからどうされるおつもりですか」
宮沢は、いつになく真剣な面持ちでそんな言葉を投げかけてきた坂本の真意が推し量れずにいました。
まだ30そこそこではあるものの、言いたいことをズバッというタイプの坂本は、衰退していくばかりの足袋産業の将来性を危惧していたのです。
言葉に窮する宮沢。地道な営業努力は買うが、もっと違った発想で新規事業を展開していくことをそろそろ考えるべきでは?と坂本は提案しました。
これまで家業を続けることしか頭になかった宮沢には、全くその発想が浮かんでいなかったのです。
坂本はさらに続けます。今ある技術を生かして何か出来ないかと。こはぜ屋さんの強みって何ですかと。
それに対し宮沢は、「考えたこともない」としか言えませんでした。
そんな時に宮沢に娘の茜からメールが入っていました。
「忘れないでね」という書き出しで、頼まれていたことを思い出した宮沢。娘から指定されていたスニーカーを買ってくる約束をしていたのです。
運動靴売り場で目当ての靴を見つけ店員に在庫を出してもらうのを待っている間、宮沢の目にふとあるものが飛び込んできました。
それは奇妙な形をしたシューズで、なんとつま先部分が5本指に分かれているものだったのです。
興味深く見ていると店員に声を掛けられ、この靴がビブラム社の「ファイブフィンガーズ」というものなのだと教えてくれました。
地面を掴むように裸足感覚で走ることができるため、大変な人気商品なのだということを知った宮沢。
帰りの道中、宮沢の頭の中には先ほどの靴のことが頭の中を駆け巡っていました。「地面を掴むように、裸足感覚で走る」というは地下足袋と同じ理論だと思っていたのです。
宮沢が子供の頃は足袋で走ることが珍しくなく、そもそもが走りとは無縁ではなかったもの。
地下足袋のようなランニングシューズが人気なら、ランニングシューズのような地下足袋がウチにも出来ないか…そう考え始めたのでした。
宮沢のアイデアを聞いた富島は、かつてウチにもマラソン足袋というものがあったと教えてくれました。
さらに足袋でオリンピック(1912年のストックホルム大会)に出場した金栗四三(かなくり しぞう)のことも詳しく知っていた富島。
昔ウチで作っていたものが倉庫に眠っているはずだから探しておいてくれと宮沢が頼むと、富島はどうにも気が乗らない様子でした。
富島としてはあんなものを今更復活させたところで意味はないと考えているようで、余計な出費がかさむことも懸念していたのです。
そんな話をしていると埼玉中央銀行の坂本がやって来ます。すると机の上に置いてあった「ファイブフィンガーズ」の写真に気付き、宮沢が思いついたアイデアについて話すと…。
「いいですね、それ」と興奮気味に賛同してくれました。まずはランニングシューズの研究から始めてみると宮沢が言うと、その前に「走る」ということそのものについての理解が必要なのでは?と坂本。
知り合いにランニングのインストラクターがいるというので、紹介してくれるという流れになり、宮沢も二つ返事でその言葉に乗りました。
数日後 ―
横浜市内でスポーツショップを経営する有村融のもとを坂本と共に訪れた宮沢。
マラソン足袋を復活させるというアイデアを宮沢が話すと、熱心に耳を傾けてくれました。
専門家からの意見を伺いたいと問いかけると、足袋そのものは運動に向いていると答えた有村。
昔は運動会でも使用する程のものだったものの、安全上の理由から現在ではほとんどなくなったのだとか。
保護者達が懸念していたのは、グラウンドに色々なものが落ちていて危ないということ。
しかし、一般的なランニングシューズなら100%安全かというとそうでもなく、趣味としてのランニング愛好者が増加する一方で足の故障も増加しているのだそうです。
それは、ソールのクッション部分があまりに分厚くなってしまったことにより、走法そのものが間違った方向になってしまっていることのようで、宮沢としてはそんなことは頭をよぎりもしませんでした。
分厚いクッションの入ったシューズで走ると、人はどうしても踵から着地をし、つま先で蹴るという走り方になってしまいます。
けれども、そういった走法は膝を痛めがちで、特に初心者の場合は腸脛靭帯炎と呼ばれる故障を起こしやすいというのです。
こうした故障事例の多さを踏まえた近年の研究では、ある面白いことがらが判明しているのだとか。
それは、マラソンの強いケニアの選手やオリンピックに出場経験のある日本人アスリートが皆一様に足の中央で着地するミッドフット着地、あるいはよりつま先に近い部分で着地するフォアフット着地をしているという事実が判明したこと。
有村に言わせると、それこそが人間本来の走り方なのだそうです。
有村は「タラウマラ族」というメキシコの辺境に住む部族を例に挙げました。彼らは1日に何十キロととにかく長い距離を走ることで有名なのだとか。
そして彼らが履くのは、サンダルのような粗末な履物(ワラーチ)で、しかも素足なのだというのですから宮沢にとっても驚きもひとしおでした。
ワラーチの実物写真を見せてもらった所、平べったい靴底に自転車のゴムタイヤを貼り付けただけのような代物で、これ走れるなら地下足袋でも行けるのでは…と宮沢の心に一筋の光明が差し込むのでした。
半年後 ―
暦は2月から3月に入ったばかりで、行田の厳しい冬はこはぜ屋の業績にも影を落としていました。
昨年の10月に予定通り大徳百貨店の改装が完了し、同時に売り上げも1割減。大徳百貨店が主要取引先であるだけに、非常に厳しい状況を迎えることに。
そんな中、宮沢がいたのは品川駅にほど近い京浜国際マラソンの会場。有村がぜひにと誘ってくれたのです。
宮沢の傍らには大地もいました。3月に入っても未だに就職は決まっていなかった彼を誘ってみたら、どうやら走りに興味があるらしく意外にもついてきたのです。
レースが始まり、場内に映し出された画面でランナーの走り方に注目して見ていた宮沢。
すると、大地が突然「…まずいな」とつぶやきました。それとほぼ同時に実況が茂木選手の様子がおかしいことを伝え、宮沢も注視すると…。
彼はダイワ食品の選手で、去年は東西大学で箱根の5区を走っていた茂木裕人だと大地が教えてくれました。
どうやら膝を故障したようで、完全にトップを走るライバルの毛塚直之に離されてしまう茂木。
かつては東西大学のエース・茂木と明成大学のエースで同じ箱根の5区を争った2人でしたが、今回も(箱根でも明成が完全総合優勝)また毛塚が勝利を上げることに。
翌朝、富島に新規開発について相談する宮沢。開発チームを発足させたいんだがと切り出すと、「私がどうこう言う話ではない」と必ずしも本音ではなさそうだったものの、一応の了承は得ることになりました。
チームのメンバーとして係長の安田、縫製課リーダーの正岡あけみ、大地、そしてオブザーバーとして埼玉中央銀行の坂本にも声をかけてみようと思うと宮沢。
話を終えると「ああ、それと」と言って富島が古ぼけた段ボールを持ってきました。かつてウチで作っていたマラソン足袋を見つけてきてくれたのです。
宮沢が見ていると周りの社員も集まってきて、みな物珍しいそうに手に取っていました。
その中に丁度係長の安田の姿もあったので、新規開発について話すと「ああ、いいっすよ」と気楽な返事を寄越した安田。
彼がマラソン足袋を手に取り、裏返すと、ゴムの靴底に商品名が型押しされていました。
『陸王』
「これだ、ヤス」と宮沢。今度開発する足袋の名前を『陸王』にしないかと意見を求めると、ヤスも周りの社員たちもみな賛同してくれました。
品質管理課のフロアに行き、大地にもこの話をするも、彼は全く乗って来ませんでした。足袋屋がランニングシューズを作っても成功する訳がないというのです。
無駄かどうかはやって見ないとわからないと宮沢が反論するも、最後まで彼の気持ちは変わらないようでした
その後、大地を除く開発チームで開いた簡単な結成式において、『陸王』のコンセプトはケガや故障をしにくいミッドフット着地を実現するシューズだと宣言した宮沢。
経費の問題などあれこれ数字をひねくりまわす前にまず作ってみて、そこから始めようということで全員の意見は一致。早速、安田を中心に商品開発がスタートしました。
2週間後 ―
『陸王』の試作品第1号が完成。
ちょっと試しに外で走ってくるという有村をドキドキしながら待っていると、「なかなか、良いですよ」と10分ほどして戻ってきました。
しかし、ランニングシューズとしてはまだ売り物にはならないと思うと有村。ソールの耐久性の問題があるので、このままでは300キロも持たないはずだというのです。
誰か有名選手が練習用にでも使用してくれたら、今後の改良やプロモーションも含めて一番の近道かもしれないという有村に、誰か紹介して欲しいと坂本が頼むと…。
面識はないけど、大和食品の茂木裕人ならいけるかもしれないと有村。
埼玉県上尾市にあるダイワ食品スポーツ管理センターを訪れた宮沢。
陸上部監督・城戸明宏にアポを取り、会ってはくれたものの何の実績もないこはぜ屋の相手をしてくれる訳もなく、なす術もなく退散を余儀なくされることに。(シューズを渡すことだけは渡したが)
ちょうどその頃、同じ場所を大手スポーツ用品メーカーであるアトランティスの営業部長・小原賢治とカリスマシューフィッターの村野尊彦が訪れていました。
茂木のサポートを行っているのがアトランティスで、今日は彼のケガの様子を確認しに来たようです。
当初は肉離れ程度のものだと思われていた茂木の負傷でしたが、実はもっと深刻で半腱様筋腱の部分損傷(左足付け根にある筋の損傷)であることが判明したと監督の城戸から聞かされ、困惑する村野。
医者からは走法そのものを変えない限り、再発は免れないかもしれないということを伝えられており、茂木が選手として再び表舞台に立つことが出来るのかということが危ぶまれていたのでした。
一方、『陸王』の今後の展開をどのように進めていくかを悩んでいた宮沢のもとに、一本の電話が掛かってきます。
それは町村学園という学校からのもので、どうやら体育の授業で足袋を使おうということで業者を探していたのだそう。
なんでも光誠学園とは兄弟校で、同校の井田から紹介を受けたのだという話を聞き、宮沢は改めて人の縁に感謝の念を抱き、一度話を聞かせて欲しいという要請を快諾しました。
翌日の午後、千葉県佐倉市内にある町村学園を訪問し、早速担当者の栗山と話を進めていきます。
本業である足袋のことであれば何でも来いと流暢に説明していると、感心したような表情浮かべながら聞き入っていた栗山でしたが、なにやら彼の表情に引っかかるものを感じた宮沢。
尋ねてみると、どうやら足袋で校庭を走り回った時の安全性を気にしている保護者が一部いるようで…。
その時、宮沢の頭にあるアイデアが閃きます。もう一足見ていただきたいものがありますといって、一旦車に戻り『陸王』のサンプル品を持ってきた宮沢。
「ほう、これはおもしろいな」と栗山も興味を引かれたようで、通常の足袋と共に『陸王』の見積もりも取って欲しいと依頼を受け、その場をあとにしました。
3日後。すでに見積もりを送っていた栗山からの回答を受けた宮沢。
「検討させて頂いたところ、御社の『陸王』に決定しました」
初めて『陸王』が売れたのです。受話器を持ったまま何度も頭を下げた宮沢の顔には、満面の笑みが湛えられていました。
ようやく残暑も過ぎ去った秋、こはぜ屋を訪ねてきた坂本はカバンからおよそ8cm四方にカットされたキューブ上の素材を取り出し、宮沢に手渡しました。
「軽い…」思わず口を衝いて出たのはその言葉でした。
この素材は何なのかと尋ねると「繭です」と坂本。
不良債権の山と化している前橋支店の倉庫の片隅に眠っていたんだそうで、強靭で軽く防虫効果もあり、なおかつ自然素材のため環境に優しい繭は、まさにソールの素材にピッタリだと坂本は続けます。
宮沢もその意見に同意。ここの社長に会わせてくれないかと勢い込んで告げると、坂本はため息を漏らしこう言いました。
「このシルクールという会社、二年前に不渡りを出して倒産してるんですよ」
シルクールの社長・飯山晴之は、繊維メーカーに10年ほど勤務した後、父親が経営していたインテリア関係の会社を継ぐために地元に戻って来たのだそう。
この会社をやりながら、一山当てるために繊維メーカー時代に培った経験を活かし、繭の加工特殊加工技術を考案し、特許を取得するに至ったものの、この開発費用で資金繰りが悪化。結果として二度の不渡りを出して倒産となったようでした。
現在は破産申請が受け入れられ、法的には借金は棒引きされているが、今もなお債権者からの報復を恐れて身を潜めているとのことで、まずは彼の居所を見つけることが最優先課題ということで、坂本と宮沢の意見は一致。
この件に関しては坂本がすでに着手しており、任せて欲しいと申し出てくれました。
飯山の居場所を見つけ、なんとか会う約束を取り付けたということで、坂本共に高崎市内のビジネスホテルで待ち合わせることになりました。
ロビーで待っていると初老の瘦せぎすの男が、警戒感をあらわにしながらも近寄ってきます。
宮沢が一通り特許について説明すると、飯山はぶっきらぼうな口調で年間5000万円払えば使わせてやるとふっかけてきました。
宮沢が食い下がるも、それが払えないなら諦めなと取り付く島もない様子の飯山。
とりあえずまた後日連絡することにしてその場をあとにした宮沢と坂本。飯山は飯山で再起をかけようと必死なのは理解出来たものの、宮沢にとってはどうにも信用できるような相手には思えませんでした。
しばらく経ったその夜、飯山は電話で宮沢にこう告げます。
「特許の件、いろいろ考えたんだが、お宅に使ってもらおうと思ってる」
信じられない思いで聞いていた宮沢に対し、「ただし、条件がある」と飯山。
使用料のことだったら無理だと宮沢が言いかけると、飯山はその言葉を遮り、ただ一つの条件を言い渡しました。
「オレを、お宅のプロジェクトに参加させてくれ」
長く苦しい試行錯誤を経て、ついに「新・陸王」が誕生した。
ソールの素材は特許技術の「シルクレイ」
そこに村野による知恵が加えられている。
第一号の「新・陸王」は村野の助言により「茂木モデル」としてつくられた。
…だが、だからといって商品開発が終わったわけではない。
むしろここからが本番なのだ。
最高のシューズを目指すため、陸王にはまだまだ改良の余地が残されている。
プロがレースで使うシューズをつくるなら、使用者の意見を聞いて何十回も細かな調整を重ねなければならない。
競技用のシューズを真の意味で完成させるためには、まだまだ時間も金もかかるのだ。
…特に「こはぜ屋」にとって問題なのはカネ。
ただでさえ新規事業のために通常以上の経費がかさんでいるのだ。
収益もないまま、このまま陸王開発に資金を投じ続けるだけの余裕は、こはぜ屋にはない。
そんな中、宮沢の脳裏に一つのアイデアが飛来する。
逆転の発想。
陸王のノウハウを、本業である足袋製造に活かすことはできないだろうか…?
こうして出来たのが、シルクレイを使った新しい地下足袋「足軽大将」だ。
従来の地下足袋よりも遥かに軽い足軽大将は強気の値段設定をものともせず飛ぶように売れた。
これにより、こはぜ屋の業績は急回復。
資金難という目前の問題を解決する一手となった。
村野の力もあり、陸王は茂木選手に使ってもらうことに成功。
茂木からのフィードバックによって陸王はどんどん進化していった。
最後までネックになっていたアッパー部分(足の甲に当たる部分)の新素材も見つかり、一気に陸王は最終完成形へ!
そして、ついに村野のGOサインが出た。
いよいよ「陸王」の量産が始まる…!
販売開始から1カ月が経過した。
この一月で売れた陸王は15足。
村野は「知名度ゼロからのスタートにしては上々だ」というが、宮沢はどこか物足らない。
村野の言う通り、圧倒的な知名度不足が「陸王」にとっての問題だ。
こうなれば、あとは茂木選手の力に頼るほかない。
茂木選手が陸王を履いたレースで好成績を残せば、きっと陸王にも注目が集まるはずだ。
そうして、いよいよニューイヤー駅伝の幕が開けた。
世間が注目するのは、かつての茂木のライバルであり、今や陸上界の期待を一身に背負うホープに成長した男・毛塚。
今回、茂木は第六区で、その毛塚と直接対決することになる。
毛塚が履くシューズはアトランティスの「RⅡ」
それに対して、茂木が当日選んだシューズは…「陸王」だ。
スタートから数時間が経過し、タスキはついに第六区へ!
4位の毛塚と5位の茂木による熾烈なデッドヒートが繰り広げられる。
それを息を呑んで見守るこはぜ屋の面々。
その瞬間、縫製課のリーダー格であるあけみさんが叫んだ。
「抜いた!抜いたよ、茂木ちゃんが!」
風を読んで攻勢を仕掛けた茂木が毛塚を抜き去り、その差をぐんぐんと広げていく。
六区のゴール前、ついに茂木は3位の選手までもを抜いてしまった。
大勝利と言っていいだろう。
故障して挫折を味わった茂木の走りが、そして陸王が、大勝利を収めたのだ。
茂木の活躍により注目を集めるかと期待された陸王だったが、現実にはそうならなかった。
マスコミは茂木の活躍そっちのけで「毛塚、体調不良だった?」などと毛塚のことばかりを書き並べたのだ。
これでは茂木も陸王も報われない…。
そして、陸王の受難はまだ続いた。
陸王のソールに使われている新素材「シルクレイ」を加工するための装置が致命的に壊れてしまったのだ。
もともと試作機を無理して使って量産していたため、こうなることはわかっていた。
だが、何も今でなくても…。
もしシルクレイの加工装置をイチからつくろうとすれば、1億円の資金と3カ月の期間が必要になる。
こはぜ屋にはとてもそんな余裕はない。
となれば、当ては銀行からの融資だが、これもまったく相手にされない。
そもそも融資を受けられたとしても、金利が高すぎて行き詰ってしまうことは明白だ。
…もう、これで終わりなのか?陸王のプロジェクトをすべて諦めて、もとの足袋製造業者として細々やっていくしかないのか?
だがそれでどうなる?
足袋だけでは生き残っていけないから陸王をつくったんじゃなかったのか?
それに茂木選手へのサポートはどうなる?こちらの都合で一方的に打ち切ってしまうのか?
重苦しい雰囲気がこはぜ屋に漂う。
宮沢は、決断を迫られていた。
宮沢は買収を希望する国際的アパレルメーカー「フェリックス」の御園社長と会談することになった。
彼が言うには大手資本の傘下に入れば
・資本問題の解決
・シルクレイの製造再開
・信用が着く
・雇用の安定
不安要素はあるが、メリットは大きい。こはぜ屋に興味を持った珍しい会社はアメリカに本社を構えるアパレルメーカー・フェリックス。
彼はもちろん、こはぜ屋に興味を持ったのではなく、シルクレイの製造技術だ。
初めは同じ素材を社内で開発できないかと考えたが、時間と費用が膨大にかかるため断念。直ぐに必要であれば技術を買ったほうが早いということで声を掛けたらしい。
様々な思いが頭を駆け巡る社長の宮沢だが、シルクレイを提供している飯山が冷静な口調でこう話す。
「あんたはバカだ」
相手が欲しがっているのはシルクレイの製造技術。買収ではなく製品の供給が出来ないか?という交渉が出来るはず。
交渉というのは常に立場が対等であり、なにもシルクレイの製造技術を欲しがっているのはフェリックスだけじゃない事を主張すればいい。
相手が買収しかダメだ!と言うなら、シルクレイを欲しがっている他の企業と交渉するぞ、と強気で行かないでどうする?と飯山は言った。
フェリックスの社長に宮沢が提示した条件は
供給する代わりに設備投資費用の3億円をフェリックスに融資してもらうこと。
シルクレイの生産がストップしていたこはぜ屋は、赤字を出してしまったが、フェリックスの援助で運転を再開。更にフェリックスから受注も3年は保証してくれるとのことなので、当面は安泰。
「社長、あたしたち、がんばるから」
立ち上がったあけみさんはいうと、仲間たちの方を向いて声を張り上げた。
「こはぜ屋百年ののれん、全員の力で守ろうじゃないの。負けるもんか!」
歓声が上がった。
その中にいて、宮沢は社員たちに向って何か言おうとした。
だが、言えなかった。
こみあげてきたもので声が詰まり、言葉が出なかったからだ。
これが、こはぜ屋だ。
そう宮沢は思った。
『社員一人一人の気持ちが、まっすぐに前を向いている。
不器用だけど、熱くて温かい、これがウチの会社なんだと。
守るぞ、こはぜ屋ののれんを。』
やっと「陸王」の製造に取りかかることができるようになった。
品川で開催される京浜国際マラソン大会に、茂木は「陸王」を履いて出場。「こはぜ屋」を助けたいという思いからであった。
茂木は1位となり、「陸王」は一躍有名になる。
就職活動中だった大地は、優良企業のメトロ電業の内定を得る。
「陸王」はトップアスリート達にも好評だった。
こはぜ屋の新工場には、巨大な機械がフロアを埋め尽くしており、メインバンクは東京中央銀行本店へ移行していた。
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